放送大学(心理学)

放送大学心理学「錯覚の科学」が面白い!偽の記憶が植えつけられる?

思い出の写真
 家族との思い出、こんな経験ありませんか?

 

子供の頃の話をしていて、相手との記憶が一致しなくて話が噛みあわなかった。

家族で行ったお祭りの帰り、入ったお店は確かにラーメン屋だったと記憶している。

でも、きょうだいは豚カツのお店だったと言って譲らない・・・。

 

今、放送大学で心理学の勉強をしています。

聴講している科目の一つ「錯覚の科学」

人の感覚と実在の世界とのズレや、そこから発生する情報のゆがみなどを勉強しています。

「自分の身のまわりにはこんなにも錯覚があふれている!」という新鮮な驚きもあって、

毎回楽しみにしている授業の一つです。

中でも「人の記憶、記憶の錯覚」についての授業が本当に面白かった!

心理学に興味のある人にぜひ知っていただくために、

もう一度内容を追ってご紹介したいと思います。

記憶の錯覚|あなたの記憶は本当に正しい?

ドラマでよく、事故や事件の目撃者が聞き取り調査を受ける場面がありますよね。

最初は自信を持って答えていた目撃者。

だんだん証言があいまいになって、最初とは違うことを言いだします。

最終的には「実はよく覚えていない、わからない」なんて結末に・・・。

その時、人の記憶の中ではこんなことが起こっています↓

  1. 何か事故(事件)を目撃する
  2. 新聞、テレビ、人づてにさまざまな情報が入る(間違った情報も当然あり)
  3. 頭に入ってきた情報を、いつの間にか自分の記憶としてインプット
  4. 記憶がゆがむ

これを「誤情報効果」といいます。

 

自分が見たことを正しく記憶して、しかも人に伝えるというのはとても難しいことなんですね。

授業ではそこから冤罪の可能性についても触れていました。

「自分の記憶は経験したことそのものだから、間違っているはずがない」

それって、錯覚なのかもしれません・・・。

記憶の錯覚|あなたの記憶、本当に自分のもの?

「あなたの記憶は間違っているかもしれない」

確かに人の記憶っていいかげんなところ、ありますよね。

昨日の晩御飯だってすぐに思い出せないのですから、そんなこともあるでしょう。

じゃあ、こちらはどうでしょうか?

 

「ほんとうは経験していない出来事を、自分の経験として記憶している」

 

自分が経験していない出来事なのに、いつのまにか自分の中では「思い出」として記憶に残っている。

・・・こわくないですか?

SF映画でありますよね。

頭に装置をいっぱいつけられて新しい記憶を植えつけられるというストーリー。

そんなこと、現実の世界でありえるのでしょうか。

実は、こんな実験があるのです。

1994年10月5日付けのニューズウィーク(日本語版、p.62-63)に「『偽りの記憶』のメカニズム」という記事が掲載された。この冒頭に、ワシントン大学で行われた驚くべき実験が紹介されている。14歳の少年、クリスは、5歳のころにショッピングセンターで迷子になったときのことを思い出すように兄に言われた。最初はそのような出来事を思い出すことができなかったクリスだが、数週間後には迷子になったときのことを鮮明に、そして詳細に思い出すことができた。衝撃的なのは、クリスは、そんな経験はしていない、ということだ。つまり、クリスは、ショッピングセンターで迷子になったというフォールスメモリ(false memory;偽りの記憶)を「植え付けられた」のである。

放送大学教材 「錯覚の科学」(菊池 聡)放送大学客員教授 信州大学教授

  軽く鳥肌がたってしまいました

 

この実験の対象はクリス少年一人ですが、もっと大人数に対する実験も行われています。

「実際に経験していない出来事」を「自分の経験した出来事」として植え付けられる。

そんな人が数多く存在したのです。

 

この偽りの記憶を「フォールスメモリ」と呼びます。

この偽りの記憶「フォールスメモリ」を植え付けられた人達には、ある共通点がありました。

  • 自分が信頼している人間から話を聞かされていること
  • 聞かされた話を、「鮮明に思い浮かべイメージすることができる」という特性をもっていること

重要なのは、自分が信じ切っている人、「自分にうそをつくはずがない」と思い込んでいる相手から繰り返し話を聞かされるということ。

そして、その情景を具体的に思い浮かべることで、「ほんとうは起こっていないこと」なのに記憶として刷り込まれてしまうんですね。

悪用されたら怖い・・・

記憶の錯覚|虚構の世界、現実の世界との境界線

私たちは普通、夢の世界と現実の世界が一緒になってしまうことってないですよね。

ふだん頭の中であれこれ想像することも、ちゃんと想像の世界だってわかっています。

夢の中で憧れの人と食事をしても、目が覚めてしまえば「あー、夢だった」って理解してがっかりしますよね。

どうしてそのイメージが夢だってわかるのでしょうか?

夢の中で起きることは、実際に経験したことと違ってどこかぼんやりと曖昧だったり、

唐突すぎたり、つじつまが合わなかったりします。

何十年も会っていない同級生が、突然現れたりしますもんね。

「ありえない」ことだから自分でも夢だって理解できます。

 

一方で、現実の世界で実際に経験したことは、前後関係から出来事の詳細にいたるまで自然な流れで覚えています。

こまかな点は忘れても、ちゃんと時系列で並べることができますよね。

そうやって私たちは、夢と現実を混同することなく毎日を送っています。

この正常な心の働きを「リアリティモニタリング」といいます。

 

でも、ある情景を頭の中で鮮明にイメージし、それを何度も繰り返していると、

たとえそれが「偽りの記憶」だったとしても

「実際に自分が経験したこと」として認識してしまう傾向があるというのです。

 

たとえばこんなケース。

ものすごく思い込みの激しいタイプの人。

他人からみたらとても本当のこととは思えないことを、毎日話しています。

「あの人はちょっと虚言壁があるからね・・・」

でも、もしかしたら「フォールスメモリ」が関係していて、

この本人の頭の中で、願望を膨らませて想像しているうちに、

現実の世界との区別がつかなくなってしまったのかもしれません。

私たちが一人一人、大切に持っている記憶。

それはとても頼りなくて、ゆらぎやすいという面も持っているのです。

記憶の錯覚|偽りの記憶は、好み・態度・行動に影響

ここに「フォールスメモリ」についての実験があります。

実験参加者に「あなたは昔、卵サンドを食べて具合が悪くなった経験がある」(これはフォールスメモリ)と伝えたところ、次の2つのグループにわかれました。

  1. 話を信じた人
  2. 話を信じなかった人

実験の直後に軽食が出され、その中に卵サンドも入っていました。

実験の直後には
①「話を信じた人」②「話を信じなかった人」両者ともあまり手をつけませんでした。

4か月後、同じように軽食が出されました。

①「話を信じた人」は②「話を信じなかった人」に比べて、明らかに卵サンドに手をつける人が少なかったのです。

卵サンドに関して植え付けられたネガティブな記憶が、4か月後の行動にまで、影響を与え続けたということですね。

この授業を受けて
  • 記憶というのは曖昧で、いつどこで「偽りの記憶」にすり替わっているかわからない。
  • 何かを決める時、人は「自分が経験してきたこと」=「記憶」を判断材料にしている。でもすべて正しいとは限らないし、自分の判断を信じすぎてもいけない。

いままで、自分の記憶にあるものは「すべて経験してきたこと」だと思っていました。

でも今回の授業を受けて「そうとも言えない」ということを知りました。

人には「記憶の錯覚」があります。

自分のもっている記憶や情報だけですべてを判断するのは危険なこともあります。

自分以外のもの(たとえばまわりの人の意見であったり、信頼できる情報であったり)から

の材料も集めた上で、多面的なものの見方ができるようになりたいなと感じました。

こちらでご紹介した
放送大学心理学授業「錯覚の科学」

2019年度4月からは
BS232(BSキャンパス)にて
毎週木曜日 13:15〜14:00 放送になります。
(H31.3現在の情報です)

どなたでも無料でみることができます。

興味のある方、ぜひご視聴ください
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